スタートアップや新規事業を成功させるには、PMF(プロダクトマーケットフィット)というマーケティングの概念が欠かせません。
PMFとは、提供する製品が顧客の課題を解決し、適切な市場で受け入れられている状態のことです。
この記事では、PMFを達成するためのフレームワークや、PMFを達成するメリット、PMFを達成させる手順について解説します。
目次
Product Market Fit(プロダクトマーケットフィット)とは?
PMFとは、「Product Market Fit」の略で、「製品が特定の市場において適合している状態」のことです。
つまり、提供する製品が顧客の課題を解決し、適切な市場で受け入れられていることを意味します。
これには、製品の品質や機能、価格などが市場の要求に応えられていることも含みます。
PMFはアメリカの著名なソフトウェア開発者であり、投資家でもあるマーク・アンドリーセン氏によって広められたアイデアで、スタートアップや新規事業にとって、成功の戦略となるものです。
PMFを目指すには、まずPSF(プロブレムソリューションフィット)というステップを踏むことが重要です。
PMFを達成するメリット
PMFを達成することで得られるメリットはさまざまあります。主に上げられるメリットは、次の3つです。
- 売上や顧客満足度が向上する
- 事業の安定性が高まる
- 競争力が向上する
PMFがスタートアップや新規事業の成功にとって重要な要素と言われているのは、上記のように多くのメリットがあるためです。メリットについて1つずつ詳しくみていきましょう。
売上や顧客満足度が向上する
製品が市場に適合していると、その製品に対する需要が高まり、問合せや申込が増えます。
商品が売れるため、売上も向上する可能性が高いでしょう。
また、PMFを達成することは、顧客満足度が高まることにもつながります。
顧客満足度が高まると、口コミやリピート購入などの拡散が促進され、売上向上につながります。
事業の安定性が高まる
PMFが達成されると、市場の変動に対する適応力が増し、事業の安定性が向上します。
これは、PMFの達成には製品の改良や拡張に必要なフィードバックやデータの収集が不可欠だからです。
フィードバックを通じて、顧客のニーズが変化しても、製品を適切に改善し、顧客のニーズを継続的に満たすことが可能となります。
顧客のニーズを継続的に満たすことで、顧客からの強い支持を獲得し、持続的な成長を実現することができます。
また、PMFの指標を用いることで、事業の撤退を判断する基準も明確化されるメリットもあります。
競争力が向上する
PMFが達成されると、製品の競争力が明確化し、競合製品との差別化が鮮明になります。
競合製品との明確な差別化が可能となることで、市場シェアの拡大や収益の増加が期待できます。
さらに、PMFの達成はブランドイメージの向上にも寄与します。
製品が市場と良好にフィットすると、顧客の信頼とロイヤリティが高まり、ブランドの評価が向上します。
これは、長期的な顧客関係の構築と、持続可能なビジネス成長につながります。
PMFを達成するためのフレームワークとは?
PMFのフレームワークとは、PMF(プロダクト・マーケット・フィット)を達成するための方法論や手順のことです。
PMFを達成するためのフレームワークはいくつかありますが、代表的なものとして「フィットジャーニー」というものがあります。
フィットジャーニーは、顧客の課題と解決策を探求し、価値提案とMVP(最小実行可能製品)を作り上げるステップからなるフレームワークです。
製品が市場のニーズを満たし、顧客にとって価値のあるものであるかを検証していきます。
フィットジャーニーを取り入れることで、以下のようなメリットがあります。
- 市場のニーズに応える製品やサービスを効率的に開発できる
- 顧客のフィードバックやデータをもとに製品やサービスを改善できる
- 製品やサービスの価値提案や競争優位性を明確にできる
- 製品やサービスの市場投入時期や投資戦略を決めやすくなる
- 市場の変化や競合の動向に素早く対応できる
PSFの達成がPMFの成功のカギ
PMFを達成するためには、PSFに到達することが必要です。
PSFとは、Problem Solution Fitの略で、「顧客の課題と企業の提供する解決策が合致している状態」のことです。
顧客のニーズに応える製品を開発するためには、PSFを達成することが重要です。
PSFを達成するためには、顧客の課題を特定し、課題解決のためのプロトタイプを作成し、検証し、改善し続ける必要があります。
次の見出しでPSFの具体的なステップを解説していきます。
PSFを達成するためのステップ
PSFを達成するためには、以下の手順を踏む必要があります。
- 顧客の課題やニーズを特定する
- 試作モデルを作成する
- 顧客に試作モデルを使ってもらう
- フィードバックをもとに改善する
上記のように、課題の特定→プロトタイプの作成→評価といったことが主な流れです。
PMFを達成するためには、その前段階であるPSFについても理解しておかなければなりません。
それぞれのステップについて、しっかり理解していきましょう。
顧客の課題やニーズを特定する
まずはターゲットである顧客にインタビューやアンケートを行い、どんな問題やニーズがあるかを把握します。つまり、市場調査をするということです。
この際には、同じ課題を抱えている人が多いかどうかや、お金を払ってでも解決したいかどうかなどを確認する必要があります。
試作品を作成する
次に、ターゲットである顧客の課題に対する解決策を考え、最小限の機能を持つ試作品(プロトタイプ)を作ります。
解決策を考えるときには、まず問題や課題が本当に解決されるかどうかを検証します。
そして、解決策が市場に受け入れられるかどうか、実現性があるかどうか、自社の強みを活かせるかどうかなどもチェックしましょう。
これらの点を確かめることで、解決策の妥当性や効果性を高めることができます。
試作品(プロトタイプ)を作る際は、顧客の声をもとに、必要な機能だけに絞り込みましょう。
必要な機能に絞り込むことで、顧客の課題が解決できているかどうかが確認できるようになるためです。
また、試作品(プロトタイプ)は、解決の仮説が当たらないときには変えなければなりません。
そのため簡単に作り直せるように、必要な機能だけに絞りこむことが大切なのです。
顧客に試作モデルを使ってもらう
プロトタイプができたら、ターゲットである顧客に実際に試作モデルを使ってもらい、その使い勝手や満足度をフィードバックとして収集します。
顧客のニーズや購買意欲を深堀りするために、ヒアリングやインタビューを活用した定性的な調査と、人数や割合を数値化するためのインターネットを利用した定量的な調査の2つが、非常に効果的な手段となります。
これらの調査方法を組み合わせることで、より詳細で包括的なフィードバックを得ることができるでしょう。
定性調査では、個々の顧客に対して深い調査を行います。
それぞれがどのような状況で問題に直面し、その頻度はどの程度であるか、また、提供した解決策が問題解決のために適切であるかなど、顧客の問題と解決策の適切性を詳細に確認しましょう。
ただし、定性調査だけでは、少数の特異な意見が顧客全体のニーズを誤解する原因となる可能性があります。
そのため、インターネットを活用したアンケートなどの定量調査を併用し、問題を抱えている顧客の割合、問題の発生頻度、支払可能な費用の平均値などを定量的に把握することで、ビジネスの成長性を具体的に視覚化する調査が重要となります。
このフィードバックをもとに、課題を解決できているかどうかを見極めます。
フィードバックをもとに改善する
顧客からのフィードバックをもとに、製品を改善していきます。
顧客の反応が期待以下だった場合、顧客から得たフィードバックを活用してプロダクトを磨き上げ、PSF(Problem-Solution Fit)へと一歩一歩近づいていきます。
なお、顧客のフィードバックの結果が大幅に期待を下回った場合、「課題解決のためのプロトタイプを再作成する」という選択をとることも重要です。
再スタートは手間がかかるかもしれませんが、PMF(Product-Market Fit)のフェーズに進んだ後で軌道修正を行うよりも、コストとリスクを大幅に削減できるためです。
PMFを達成するためのステップ
PSFを達成できたら、次はPMFのステップへ進んでいきます。
PMFの具体的なステップは、次のとおりです。
- MVPを作成する
- MVPを顧客に使ってもらう
- フィードバックをもとに改善を繰り返す
上記のように、PSF(Problem-Solution Fit)をクリアした後のPMF(Product-Market Fit)達成への道のりは、MVP(Minimum Viable Product)の作成と、それを顧客に実際に使用してもらいながらの評価と検証の反復というプロセスを経ることになります。
この一連の流れは、ビジネスの成功にとって重要なステップとなるため、1つずつしっかり理解していきましょう。
MVPを作成する
はじめに、MVPを作成します。
MVP(Minimum Viable Product)とは、最低限の機能を持つプロダクトのことです。
ただし、単純に機能が少なければ良いというわけではありません。
MVPは、実用的な最小限の機能を備えつつも、PSFの段階で確認した独自の価値を持つ製品である必要があります。
イメージ的には、PSFのプロダクトタイプの段階を少し進化させた状態、つまり開発が一段階進んだ状態を指します。
必要な機能に焦点を充てたMVPを顧客に試用してもらうことで、プロダクトの進行方向が適切であるかを最小のコストで検証することが可能となります。
これにより、効率的に製品開発を進め、事業成功につなげることができるのです。
MVPを顧客に使ってもらう
作成したMVPを市場に展開し、顧客からの評価を収集します。
具体的には、PMFで実施した検証方法を用いて、提供サービスが顧客にとって十分な価値を持ち、お金を支払うだけの価値があるかどうかの「価値の検証」をします。
さらに、提供サービスが広範なニーズを満たし、市場の拡大や将来性が見込まれるかどうかの「市場の検証」もします。
PMFを測定するための手法には、主に以下のような方法があります。
- アンケート調査(PMFsurvey)
- NPS(ネットプロモータースコア)
- 先行指標
- エンゲージメント
- リテンションカーブ
フィードバックをもとに改善を繰り返す
MVPの評価と検証を経たあと、そのフィードバックをもとに、プロダクトの機能や品質を改善し続けます。
改良版を再度市場に投入し、顧客からの評価を収集するというサイクルを繰り返し、製品を逐次改善していきます。
MVPの構築、市場投入、評価の測定など、2回目以降のサイクルでも基本的には初回と同じ手法を採用します。
ただし、2回目以降では、顧客の反応を定量的に分析する際に、これまでの分析結果と比較し、数値上の改善が見られるかどうかを確認することが重要となります。
PMFのサイクルでは、過去の結果と現在の数値を比較しながら、製品が正しい方向に進展しているかを確認することが重要であるためです。
たとえば、改善を図ったにもかかわらず、評価の数値が下降している場合、前回のバージョンのMVPに戻すという選択も視野に入れるべきです。
1度PMFを達成した後も、競合や代替品に対抗するために、改善を繰り返し、プロダクトの差別化や革新を図ります。
PMFコンサルティングならハエモリ企画
本記事では、PMFを達成するためのフレームワークや、PMFを達成するメリット、PMFを達成させる手順について解説しました。
特に、新たなビジネスを立ち上げるスタートアップ企業や起業家にとって、PMF(Product-Market Fit)は極めて重要な概念となります。
PMFを達成するためには、まずPSF(Problem-Solution Fit)の段階をクリアし、その上でMVP(Minimum Viable Product)の作成と検証を反復的に行うことが必要です。
さらに、PMFは一度達成したとしても、それが終わりではありません。
ビジネスは常に変化し進化するため、PMFも継続的な改善と更新が求められます。
ビジネス運営においては、常にPMFの視点を持つことが重要です。
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