この頃PMF(プロダクトマーケットフィット、英:Product Market Fit)という言葉をよく耳にしませんか?
PMFは、アメリカの投資家でソフトウェア開発者のマーク・アンドリーセン氏が考案した概念で、「顧客のニーズを満たすプロダクトが、良い市場にある」状態を指します。
PMF達成は事業成功の前提条件ともいえ、昨今のスタートアップ企業などが成功するために欠かせない要素の一つです。
しかし、実際にPMFを達成したか確認する、あるいは達成度合いを測るには、さまざまな指標が必要となるでしょう。
本稿では、PMFの定義と、PMF達成までの主な過程を解説しつつ、PMFの達成度合いを計測する指標の具体例を紹介していきます。
目次
PMF(プロダクトマーケットフィット)とは
PMF(プロダクトマーケットフィット)とは、よいマーケットにマーケットを満足させるプロダクトがある状態を指します。
- Product(プロダクト):よいプロダクトが
- Market(マーケット):よいマーケットに
- Fit(フィット):ある状態、適合する状態
PMFの提唱者であるマーク・アンドリーセン氏は、ブログで「重要なのはPMFの達成だけだ」と述べ、PMF達成が事業の成功に如何に重要であるかを示しています。
マーク・アンドリーセン氏がPMFを提唱して以降、多くの起業家やcompany founders、ベンチャーキャピタルの注目を集めました。
PMFを達成しないリスク
では、PMF(プロダクトマーケットフィット)を達成しないと、どのようなリスクを生むのでしょうか。
これは非常に単純で、PMFの達成なしには売上が上がらず、そのままでは経営が悪化する可能性もはらんでいます。
マーク・アンドリーセン氏のブログの一部を要約すると、「顧客からの問い合わせが多く、対応するスタッフの採用に追われるなど、可能な限り速い速度でプロダクト制作とサービス維持を継続できる状態」がPMFであるとされています。
裏を返せば、PMFが未達成だと、マーケティング施策を打っても顧客から問い合わせが来ず、商談しても顧客のニーズを満たせず受注に至らないなど、悪循環に陥ると考えられます。
PMF達成までのプロセス:PSF(プロブレムソリューションフィット)
それでは、実際にPMF(プロダクトマーケットフィット)達成までに通るプロセスのうち、特に重要となるPSF(プロブレムソリューションフィット、英:Problem Solution Fit)について見ていきましょう。
PSFでは、顧客が抱える課題に対する解決策を提案し、顧客が購買意欲を示すかを検証します。
また、MVPと呼ばれるプロダクトのプロトタイプを作成し、実際に市場に投入してユーザーの反応を分析します。
ユーザーからのフィードバックを得てMVPを改良することで、よりPMF達成に近づくこととなります。
PSF達成にかかせないMVP(Minimum Viable Product)
PSF(プロブレムソリューションフィット)では、競合との差別化を図ったプロダクトのプロトタイプとなるMVP(Minimum Viable Product)を作成し、顧客からフィードバックをもらいます。
MVPのVにあたる「viable」は「実用可能な」を意味し、Minimum Viable Productは「実用最小限の製品」を意味します。
MVPのテストでは、的確かつ正確なフィードバックを得ることで、今後の改良に役立てられるだけでなく、そのプロダクトがどの程度の収益性を持つかを確認できます。
そのため、ターゲットとする課題を実際に抱え、解決策へ投資してくれそうな協力者を選定しましょう。
また、複数人に依頼することで、異なる視点からのフィードバックを得られるでしょう。
フィードバックをもとにMVPの改良を繰り返し、PSFの達成、さらにPMFへの到達を目指します。
PMF達成度合いを測る指標
PMF(プロダクトマーケットフィット)が達成できたと判断しても、その達成度合いを定性的、定量的に測るためには、具体的な指標が必要です。
ここでは、PMFの達成度合いの測定に用いる指標の具体例4つを紹介します。是非参考にしてみてください。
- Product/Market Fit Survey
- NPS(ネット・プロモーター・スコア/Net Promoter Score)
- リテンションカーブ(Retention curve)
- エンゲージメントデータ
指標1:Product/Market Fit Survey(PMFsurvey)
Product/Market Fit Survey(PMFsurvey)は、Eventbriteなどのスタートアップ企業を支援し、グロースハッカーという言葉の生みの親である起業家のショーン・エリス氏が考案したアンケート調査です。
PMFsurveyは、PMF(プロダクトマーケットフィット)の達成度合いを定量的に測定、検証し、顧客満足度を把握する先行指標調査として有効です。
PMFsurveyは、ユーザーに対し「このプロダクトが利用できなくなったら、どう感じるか?」と質問を投げかけることで、ユーザーの価値評価を把握します。
定性的な検証結果を避けるため、回答は以下に示す4つのセグメントで設定し、それぞれの回答割合から、プロダクトがどのように評価されているかを定量的に測定します。
- 非常に残念
- やや残念
- 残念ではない
- 該当しない(もうこのプロダクトではなく、競合の別プロダクトを使用)
40%以上のユーザーが「非常に残念」と回答した場合、同プロダクトはPMFを達成していると判断できます。
逆に40%以下の場合、顧客が競合に移る可能性が高いなど、低いロイヤルティが顕著であることから、プロダクトのどこかに問題が潜んでいることを示唆します。
指標2:NPS(ネット・プロモーター・スコア/Net Promoter Score)
NPS(ネット・プロモーター・スコア、英:Net Promoter Score)は、「純粋な奨励者のスコア」を意味します。
NPSは、プロダクトを利用するユーザーが、どの程度プロダクトに愛着を持ち、価値を感じるかを示す顧客のロイヤルティを計測し、スコア表示する指標です。
NPSはユーザーに対し、「同プロダクトを友人や同僚などに薦めるか」と質問し、0~10までの計11段階(3つのセグメント)で回答を集計してスコアを割り出します。
- 0~6点:批判(プロダクトに不満を持ち、悪評を広める可能性あり。もうこのプロダクトを使用しないかもしれない)
- 7~8点:中立(プロダクトには概ね満足だが、競合のプロダクトでもよい)
- 9~10点:推奨(ロイヤルティが高く、自らプロダクトを購入し良い評価を広めるファン、友人などに薦めるpromoterとして機能する)
NPSの算出方法は、各セグメントのうち、推奨と回答した割合(%)から批判と回答した割合(%)を引いて導き出し、スコアが高いほど良いとされます。
日本企業のNPSは、トップ企業のスコアで0~-20、平均スコアでは-30~-40であり、ほとんどの場合マイナスとなります。
顧客満足度はNPSと同じような指標ですが、事業の成長率との相関に違いがあり、顧客満足度に比べ、NPSの方が成長率との相関が高いと言われています。
そのため、NPSは多くの企業アンケートなどにも導入されています。
指標3:リテンションカーブ(Retention curve)
リテンション(retention)とは維持を意味します。
リテンションカーブはプロダクトの顧客維持率を示すグラフで、プロダクトがどの程度の価値を示し、顧客に利用され続けているのかを表します。
グラフの縦軸はリテンション(維持)率を、横軸はプロダクトのリリース時からの経過時間を示し、時間が経っても高いリテンション率を維持している場合(横ばいに推移している状態)、PMFに到達していると判断できます。
一方、グラフが右肩下がりの場合は、リテンション率が低い=解約率が高いことを示し、PMFに到達していないと判断できます。
BtoCプロダクトの場合は1日、7日、28日後の数値で測り、BtoBプロダクトの場合は月間、年間で数値を追っていきます。
指標4:エンゲージメントデータ
エンゲージメントデータは、ユーザーがプロダクトをどの程度利用し、どの程度愛着を持っているかを評価する指標です。
プロダクトの契約数やユーザー数に加え、商談数や成約数、継続期間などを先行指標として設定し、データを収集します。
エンゲージメントデータは、業界やプロダクトの種類によって設定すべき指標が異なり、自身のプロダクトの属性に合わせた指標の調整が肝要です。
PMFの測定に適さない指標
これまでPMFの達成度合いを測る指標を紹介してきましたが、逆に適さない指標はあるのでしょうか。
例えばMAU(月間アクティブユーザー数、英:Monthly Active Users)は、新規獲得ユーザーの数値を測る指標で、「プロダクトに満足し、継続利用する顧客が多くいる」状態を示すPMFを測る指標としては適していません。
また、上記の考えに照らすと、資金調達額やバリュエーションなどもPMFを測る指標としては適していないでしょう。
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本記事ではPMF(プロダクトマーケットフィット)について、その達成度合いを測る指標とともに解説しました。
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